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『禁欲』(Ασκητική)

 『修道』とも訳しうる、カザンザキスの哲学的・神学的な思考が「黙示文学」的なスタイルで表明された作品。1920年代前半に書かれ、最終的に1945年にエピローグを含む最終版が出版されている。この『禁欲』の中に登場する゛Δεν ελπίζω τίποτα, δεν φοβούμαι τίποτα, είμαι λέφτερος゛「何にも希望を抱かず、何をも恐れない、私は自由だ」はイラクリオの彼の墓の墓碑銘にも刻まれており、世界的に有名である。

 この作品は読む人により、「この作品はニーチェ的な色合いが強い」と言う者もいれば、「モチーフとしてベルクソン的の『エラン・ヴィタル』が強く反映されている」と言う者もおり、あげくには「この作品のモチーフは古代から中世を経たギリシアの伝統に貫かれている」という意見もまである。どうやらこの作品の理解は読者の読書遍歴に大きく左右されるようである。日本語訳には京緑社より出版された「福田訳(2018年)」が存在する。

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