top of page

饗宴』(Συμπόσιον)

 『禁欲』と並んで慣例的にカザンザキスの哲学的著作に数えられる作品。カザンザキスの死後に出版された作品であり、執筆年代は厳密に特定されておらず凡そ1920年代前半とされている。「饗宴」という名を冠し哲学的著作に数えられることよりプラトンの『饗宴』との強い関連が想起されるが、実際にはプラトンの著作のみならずギリシア正教や現代ギリシア史の要素が強く反映されており、特にカザンザキスが青年期に強い影響を受けたイオン・ドラグミスやアンゲロス・シケリアノスとの精神的決別が作中に見られるなど、アプローチの難しい題材が散見される。

 登場人物たちとの「饗宴」の中での「告白」を通して、カザンザキスの「神」・「女性」・「芸術」・「ギリシア」・「民族主義」といった後年までかんがえ練られていく話題の基礎が粗削りでがありつつも生々しい形で読者の前に提示される。日本語訳には京緑社より出版された「福田訳(2020年)」が存在する。

bottom of page