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石庭』(Le jardin des roches)

 1935年に行われた、彼の極東旅行が反映された小説。1936年にエギナ島においてギリシア語ではなくフランス語で執筆された。この作品には彼の思想的遍歴のみならず、当時の日中関係が作品の背景に投影されており、主に対中工作で暗躍する日本人女性のヨシロと抗日活動に従事するリ・テ―の愛憎、カザンザキスの人格が反映された主人公の、リ・テ―の妹シュウ・ランへの愛とこれを妨げる様々な中国の時代状況が描かれる。

 カザンザキスの目を通して日本と中国、そして当時の複雑な日中関係が描かれた貴重な作品ではあるが、これに加えてカザンザキスの手になる『禁欲』のフランス語訳が作中の数カ所に収録されており、この点でも貴重な作品である。日本語訳には読売新聞社より出版された、原文から翻訳された「清水訳(1978年)」が存在する。

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